出産・中絶を決める前に!正しく知りたいダウン症
妊娠中の女性や親族の中には、胎児の健康状態について気になっている人もいるのではないでしょうか。この記事では、出産・中絶を選択する前に知ってもらいたいダウン症の原因や特徴、診断方法などを紹介します。ダウン症に向き合うためには、正しい知識を身につけておくことが重要です。
ダウン症とは
ダウン症の正式名称は「ダウン症候群」です。計46本ある染色体のうち、21番染色体を1本余分に持って生まれることで発症する先天性の疾患を指します。また、染色体が1本多い状態で生まれてくる状態をトリソミーと表現するため、ダウン症は「21トリソミー」とも呼ばれます。
ダウン症の原因
原因は、母親の卵子に起こる分裂異常であるケースがほとんどです。卵子の分裂異常は加齢によって発生する場合が多く、母親の年齢が上がるほどダウン症の割合も高まるといえるでしょう。
ダウン症の子どもの身体的な特徴
ダウン症の子どもには、一定の身体的な特徴が見られます。顔回りの特徴には、「頭が小さい」「鼻が低い」「耳が小さい」「つり目」「口を開けている頻度が高い」「舌が大きい」などがあります。また、「身長が低い」「手が短い」「肥満になりやすい」という点も特徴です。他にも難聴や胃腸の病気、視覚異常などがあり、心臓病などを併発する可能性も伴います。
ダウン症の子どもの精神的な特徴
個人差はありますが、精神面での特徴として「注意力の欠如」「多動症」「コミュニケーションが不得意」「こだわりが強い」などが挙げられます。また、比較的大人しい性格の子どもが多く、知能は平均よりも低い傾向です。そのため、言葉の発達に遅れが見られるケースもあるでしょう。
ダウン症はエコー検査・新型出生前診断で判定可能
出産前にダウン症の診断を希望している人には、エコー検査や新型出生前診断の検討をおすすめします。
エコー検査
エコー検査とは、超音波を使用して医師が目視でダウン症の兆候を確認する方法です。妊婦検診でも実施されますが、妊娠11~13週頃に胎児ドックとしてエコー検査を行う医療機関も多いです。胎児ドックでは、複数の兆候を検査します。
まずは「後頚部の厚み」です。うなじの周辺が通常よりも厚くなっている場合、ダウン症の可能性が高まります。
続いて「鼻の骨の形成度合い」を確認します。ダウン症と診断された子どもは、60~70%の確率で鼻骨ができなかったり鼻骨が小さかったりするためです。
さらに「静脈管の逆流があるか」のチェックも行います。これは、へその緒から母体の心臓までをつなぐ血管の流れの測定です。ダウン症の場合65%に逆流の症状が見られます。
最後は「三尖弁の血液に逆流があるか」の確認です。赤ちゃんの心臓の右上から右下にかけて流れる血流を測定します。ダウン症の胎児は心臓の病気を併発している場合が多く、三尖弁という弁で血液の逆流が起こる場合があるため必要となる検査です。
このように、エコー検査ではダウン症の兆候をチェックできます。しかし、ダウン症の特徴といわれる症状は健康な胎児にも発生するケースがあるため、兆候が見られるからといって100%ダウン症と決まったわけではないという点を認識しておきましょう。
新型出生前診断
エコー検査でダウン症の可能性が指摘された場合には、新型出生前診断の受診を検討しましょう。新型出生前診断とは、母体から採取した血液を調べ、胎児の染色体異常の可能性を割り出す検査です。
羊水検査とは違い、流産のリスクがなく安全である点がメリットとなります。新型出生前診断は日本医学会が認定している認定施設をはじめ、認定外施設で受けることが可能です。認定施設での検査には母親となる妊婦の年齢が「出産予定日時点で35歳以上」という条件が定められているため、条件に満たない場合は認可外施設にて受診するとよいでしょう。
中絶を決めた人の意見
出産前に胎児のダウン症が判明した場合、中絶を選ぶケースも多いようです。中絶を選択した家庭には、「経済的な余裕がない」「子どもの将来や病気が不安」「子どもが幸せになれないと考えた」など、さまざまな意見があります。中絶をする場合、どの家庭も断腸の思いで決断をしているでしょう。悩みぬいた決断であっても中絶後に後悔するケースもあるため、出産・中絶は難しい選択といえます。
出産を決めた人の意見
出産前にダウン症が判明した場合でも、出産を選択する夫婦は存在します。出産を決めた人の意見には、「何があっても我が子だから」というものもありました。また、出産前のダウン症診断が命の選択に直結しないケースもあります。実際に、「生まれてくる子どもが万が一ダウン症だった場合、出産前に知ることで準備ができる」という理由で、新型出生前診断を受けた妊婦もいます。ダウン症の子どもの多くが心臓病などの合併症を引き起こすため、万全の体勢で赤ちゃんを出産しようと考える夫婦がいるのも事実です。
この記事では、ダウン症の原因や特徴、診断方法などを紹介しました。お腹の赤ちゃんがダウン症である可能性が高まった場合、中絶か出産かの選択を迫られるケースも多いです。家庭の事情など、さまざまな問題や意見があるため、どちらが正解かを判断することはできません。だからこそ、ダウン症への正しい理解を深め、ご自身が後悔しない道を選ぶことが大切といえるでしょう。